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ひかりのおと 天津上映報告!

先日行われました中国・天津での『ひかりのおと』上映。
コーディネーターの中山大樹さんから現地リポートが届きましたのでご紹介します!



日中独立映画上映会の報告
2012.12.2 中山大樹

会場:天津・泰達当代芸術博物館 映写室
日程:2012年11月23日−25日
主催:泰達当代芸術博物館
共催:栗憲庭電影基金、中山大樹

<上映作品>
日本映画
『PASSION』濱口竜介監督(フィクション/2008年/115分)
『なみのおと』濱口竜介、酒井耕監督(ドキュメンタリー/2011年/142分)
『青すぎたギルディ』平波亘監督(フィクション/2010年/83分)
『美しい術』大江崇允監督(フィクション/2009 年/90分)
『ひかりのおと』山崎樹一郎監督(フィクション/2011年/89分)

中国映画
『女導演』楊明明監督(フィクション/2012年/42分)
『鶏蛋和石頭』黄驥監督(フィクション/2012年/115分)
『我故郷的四種死亡方式』 柴春芽監督(フィクション/2012年/90分)
『三峡啊』 王利波監督(ドキュメンタリー/2012年/108分)
『小站』 杜海朋監督(ドキュメンタリー/2012年/90分)

<ゲスト>
濱口竜介(『PASSION』『なみのおと』監督)
楊明明(『女導演』監督)
黄驥、大塚竜治(『鶏蛋和石頭』監督、撮影)
王利波(『三峡啊』監督)
郝建(北京電影学院教授)
崔子恩(北京電影学院副教授、映画監督)
王宏偉(栗憲庭電影基金芸術総監、映画プロデューサー、俳優)

・開催の主旨
ひかりのおと 天津上映報告!_d0237485_20475826.jpg泰達当代芸術博物館は天津市東部の経済開発区で1996年にオープンした民営美術館であり、絵画や写真を中心に現代アートを展示、紹介している。2010年から映画や音楽など多方面の芸術分野を集めた芸術独立論壇というイベントを主催。今回は芸術独立論壇の映画上映会としては2回目で、日本と中国の独立系映画の上映を通じた交流を目的として開催された。

・上映
ひかりのおと 天津上映報告!_d0237485_20522691.jpg会場である泰達当代芸術博物館の映写室は定員が70名ほどの小さなスペースである。そこで連日午前10時から夕方にかけて3日間上映を行った。
日本映画はすべて中国語字幕が付けてあり、中国映画には多くに英語字幕および中国語字幕が入っていた。
上映方法はすべてMOV形式などの映像ファイルをパソコンを通じてプロジェクターで上映した。
上映後には質疑応答の時間を30分程度設け、郝建、崔子恩、王宏偉のうち一人が司会をし、監督が登壇して会場からの質問に答えた。監督が来場していない場合も、客席から感想や意見を聞き、討論を行った。

・観客
ひかりのおと 天津上映報告!_d0237485_2057362.jpg統計は取っていないが、観客は多い回で50名ほど、少ない回で20名ほど、平均すると30名強であった。平日や午前中からの上映もあることを考えると、普段のイベントと比べても多い方である。
主にネットを通じて一般客に広く呼びかけたが、経済開発区という場所柄もあり、地元の人はあまり来ていなかったようである。
観客のうち多くは関係者が招待して天津市内から来た人々であり、特に南開大学の李潤暁教授が学生を多数連れて参加した。招待客には他に学者や小説家、映画関係者などがいて、地元のテレビ局などのメディアも来ていた。また、遠く北京から来ていた日本人の観客も数名いた。

・反応
上映後に質問も多く出たが、監督がいなくて答えられない内容のものも多かった。以下、上映順に観客から出た声を作品ごとに紹介する。

『青すぎたギルディ』
「個々のキャラクターがそれぞれまったく違う個性を持っており、脚本を書く力の高さを感じる。演技も良い。日本らしい軽快感と娯楽要素があって、今回観た中でも特に好きな作品」(郝建)
「予算がどのくらいで、スタッフが何人くらいいるのかが気になった。中国のインディペンデント映画に比べ、規模が大きい印象を受ける」(崔子恩)
「あまりに突拍子がないので、映画の世界に入りにくかった」(学生)

『ひかりのおと』
「台詞も少なく、感情も抑え気味で、あまり観客を楽しませようとは考えておらず、やや重い。ただ、牛の描写がとても良い。」(李潤暁)
「どちらかというと好きな作品。ただ自分の身近なテーマを撮っているのだろうが、やや話が小ぢんまりしすぎているという印象を受ける。日本の自主映画というのは、自分たちが楽しむために撮っているのだろうかという気がする」(楊顕恵/作家)
「俳優の演技がとても自然に見えた」(学生)


『美しい術』  
「直前に上映した『女導演』も若い女性の話だが、日本の女性は社会が成熟しているせいか、あまり感情が表に出てこないし、描写も静かだ。中国とはだいぶ違う」(40代男性)
「とても日本らしいという印象。技術面でもう少し改善があれば、もっといい作品になると思う」(映画関係者)

『なみのおと』
「出ている人たち、特に最後の2組がとてもいい」(李潤暁)
「日本人は寡黙な印象だが、この人たちはとてもよく話すし、話が上手だ。どうやって話を引き出したのか?」(40代男性)
「今回最も印象に残った作品。監督の相手を尊重する態度は我々も学ぶべきところがある」(郭睿/ドキュメンタリー映画を制作中)

『PASSION』
「中国人には撮れない作品だ。もっと北京電影学院などで上映するべきだ」(顧桃/映画監督)
「途中の学校のシーンが話の流れと無関係に思えて、なぜ必要なのかわからなかった」(20代男性)

・総括
今年は日中国交正常化40周年という記念すべき年であったが、領土問題で緊張が高まり、多くの日中共同イベントが中止になった。自粛もあるが、政府から圧力を受けたケースもある。また、中国におけるインディペンデント映画は、政府の干渉を避けて作られた作品が多いため、近年は政府が目を光らせており、今年は北京と南京のインディペンデント映画祭が政府の圧力により中止に追い込まれている。そういう最中に開催したイベントとあって、初日から警察関係者が偵察に来るなど、不安の中で実施された。実際、招待していた人の中には公安からの圧力で参加を見合わせたという人もいる。ただ、イベントそのものには特に支障もなく、無事に日程を終えることができた。この時期にイベントを行えたということだけでも、その意味は大きい。
中国では日本映画が劇場で公開されることは少なく、ましてインディペンデントな日本映画が紹介される機会は稀である。今回も、日本のインディペンデント映画がどういうものか知りたくて来たという観客が少なくなかった。
今回観客として毎日足を運んでくれた人の中に、ネット上に長い感想文を掲載してくれた20代の女性がいた。その文は「上映会が終わった後で友人たちとも語り合ったのだが、今回参加していた日本人は、誰もがとても謙虚で礼儀正しかった。それは彼らの職業とも関わりがあるかもしれないし、日本人の一部にすぎないかもしれない。ただ、国民に敵対感情を植え付けようとしている中国政府のやり方はおかしいし、許すべきではないと感じた」と結んであった。日本人と接する中で得た素直な感想だと思われる。映画について考える以前の問題だが、これほどまでに直接的な交流ができていないという現状がうかがえる。改めて、今回のイベントの意義を感じたし、できれば今後もこうした活動を続けていきたいと思う。

今回はイベント開催にあたり、多くの方にご協力いただいた。作品を快く提供して下さった監督方や東京芸術大学の方々、作品選考にご協力くださった森宗厚子さん、字幕を翻訳してくれた馮艶さんや季丹さん、技術サポートをしてくださった鄧建平さんに改めてお礼を申し上げたい。
by hikarinootoblog | 2012-12-05 20:59 | リポート


岡山県真庭発、映画『ひかりのおと』の新着情報など 


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『ひかりのおと』公式HP
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